サロン・立場 
浅間 征人 様 インタビュー
生駒:今日は浅間さんにこのようなインタビューをさせてもらえるということで、とても楽しい気分とともに、浅間さんとの長いお付き合いの中でこんな日が来るんだなと感慨深い気持ちを抱いております。 本日はよろしくお願いいたします。 それでは早速ですが、今はどんなお仕事、サービスをされているのかを簡単で結構ですのでお聞かせください。

浅間:今日はこのような機会をいただきありがとうございます。 私の仕事は一般的な美容業ということで、カット、セットアップ、その他に耳ツボマッサージやヘアーウィッグなどのサービスもしています。 2013年7月に前のお店より独立しこの「サロン・立場」をオープンし、現在に至ります。

生駒:実のところ私は浅間さんとは家族の次に会う時間が長いですね。浅間さんが独立される前からカットをお願いしていまして、今ではだいたい平均月6回、このモヒカンの調整をしてもらいながら、ヘアスタイルのコンサルタントのような形で担当してもらっているんですよね。 独立する際に横浜市のここ立場駅にお店を構えられたのですが、なぜ「サロン・立場」という名前にされたのでしょうか。

浅間:これは僕の大親友の接骨院の先生に相談したら、洒落た横文字の店名じゃよく分からないから、至極単純にその地名の名前にしたらどうかと提案されました。 私も地域密着型のサロンを経営したいと考えていましたので、それが一番いいと思ってこの名前に決めました。

生駒:確かにその通りで、地域密着でお店を構えるのであればその土地、駅名を冠にするのが一番わかりやすいですね。 例えばアパレルやジュエリーブランドではデザイナーが自分の名前を付けたりするじゃないですか。 これと一緒で地域ビジネスなのに自分の名前を付けたりする歯医者やクリニックもいまだに多いような気がしますが、これは何か伝統というか既成概念のようなものがあるのでしょうかね。 では、そんな「サロン・立場」のオープンは約7年前とのことですが、独立されたきっかけは何だったのでしょうか。

浅間:独立前の職場では1日に指名で約10人、1カ月約250人前後のカットを担当していまして、さすがに体が悲鳴をあげたんです。 このペースで約10年間仕事をしていて、体力の低下も相まって腰痛やら色々とひどい有様でして、これはいかん、大変だということで独立をしようと思ったことがきっかけのひとつとしてありました。


生駒:なるほど、体のことがひとつ、他には?

浅間:もうひとつは自信を持ってこれはいける、大丈夫だというノウハウを築くことができたからですかね。 美容師という職業はもちろん技術が一番なんです。 一昔前はカリスマなどと美容師がアーティストのようにもてはやされた時代もありましたが、やはりお客様もその圧倒的なテクニックに惚れてやってくると。 ただ、本当にそれだけかなと・・・。 売れる美容室・美容師に必要な要素はなんだろうとずっと考え続けてきました。 もちろん技術は大前提ですが、技術以外の強みを持って競合と差別化して勝負できるノウハウを前の職場で13年間かけて蓄積してきました。 これを私の武器として磨き上げることができたと感じ、そのタイミングで独立しようと思ったのが一番のきっかけです。

生駒:そうだったのですね。 しかし、ただこれらのきっかけがあったからといって独立はできないと思います。 もう少し、その周辺の話とか経緯を教えていただけますか。

浅間:私は前の職場で働く際、入社当初から独立をしようと思って働いていました。 ですから、ある目標を設定していて、それを達成した時点で独立するぞと考えていました。 その目標というのは、まずお金。 開業資金を13年間で2,000万円貯めたら独立しようと決めて、それが貯まったので独立しました。 先ほど申し上げた通り美容師は技術職ですから、テクニックばかりに偏ってしまい数字が弱かったりするのですが、私は独立を前提に働いていましたから、前の職場では経営に必要な数字の部分を徹底的に勉強してきました。

生駒:その話は初耳ですね。 浅間さんとはお付き合いも長いのでおおよそのことは知っていると思っていましたが、まだまだ知らない面があるんだなと少し驚いています。 それにしてもすごいですね、2,000万円ですか! それだけの下準備を経て独立されても開業当初はすぐにお客様も付かないでしょうし、不安が付きまとうところではありますが、どのような戦略を練って施策をされたのですか。

浅間:そうですね、まず非常にありがたかったのは、開業後も前の職場のお客様が来てくださったことです。 中には10年以上のお付き合いもあるお客様もいらっしゃいまして、信頼できる顧客貯金があったので、開業当初も安心感がありました。 ただ、それだけに頼っていても経営は成り立ちませんので、新規で地域のお客様をどう呼び込もうかと考えた結果、「掃除とあいさつ」をすることにしました。 これはいまだにやっていることなのですが、まずは朝お店に来たらお店の前の通りの信号から200メートルを毎日(雨の日以外は)必ず掃除をする。 その時にすれ違う方に必ずあいさつをする。 うちの店は目の前にバス停があります。外掃除している時に、バスを待っている方がいらっしゃると必ずお声掛けをしてコミュニケーションを取るようにしています。 夏場などは「暑いですね、よかったら麦茶をどうぞ」と話かけて、少しでも地域の方との接点を増やすようにしています。 もちろん駅前のスーパーに行った時に知っている方がいれば元気に笑顔であいさつする。 それを続けることで「こんな美容師さんがいるよ」と、自然と地域で評判のお店になっていきます。 これが僕の新規顧客獲得の方法です。 チラシを撒くよりも僕自身が広告塔になる方がよほど効率的で効果的です。 実はオープンしてから1度もチラシは撒いたことはないんです。

生駒:素晴らしいですね! オープンしてからそれを何千日とやり続けていらっしゃる訳じゃないですか。 浅間さんは簡単におっしゃいますが、これはなかなか続けてできるようなことではないと思います。 なぜそれをずっと続けていられるのでしょうか。 そのモチベーションはなんですか。

浅間:ひとつは、自分が恥ずかしいと思うことを率先してやろうと決めたことですね。 「わざとらしく掃除なんかして」と思われたら恥ずかしいですし。 知らない人にあいさつされて誰もリアクションしてくれないかもしれませんし。 ただ、それをやることで他と差別化ができるんですね。 自分が恥ずかしいと思うことは他の人も恥ずかしいと思うことが多いですから。 あとは、体力と気力。 体調管理するために積極的にスポーツをしたり体を動かして体力を保ち、来店してくれるお客様の笑顔に元気をもらえるからでしょうか。

生駒:なるほど。 ではこれまでの経営のなかでの失敗はどんなことがありましたでしょうか。

浅間:失敗は今までで一度もありません。 というか、失敗があったとしても僕自身が失敗だと思っていません。(笑)

生駒:それは本当にすべて成功しているのか、または捉え方なのか、どちらかですね。(笑)

浅間:どちらとも言えますね。 僕のなかでは今まで大きな失敗はないですし、小さな失敗は失敗と思っていなくて、次に気をつけようと思うだけなので。

生駒:それでは、日々のお仕事で苦労されていることはなんですか。

浅間:これは先ほどもお話ししましたが、体力と気力を保つための体調管理に一番苦労しています。 イメージですが、自分の体調が100%ではダメなんです。 200%ないとお客様に対して失礼にあたると僕は思っています。 体調が悪いと細やかな目配り・気配り・心配りができなくなる。 より繊細にお客様の動き、視線の動きまで見て対応するには、200%の体力と気力が必要だと思っています。 自分自身が強くないとなかなかできないことなので、これを維持するのにすごく苦労しています。

生駒:やはり体調管理は重要ですよね。 体調維持管理はどうやったらうまくできるのかと誰もが思うことでありながら、うまくできている方が少ないですよね。 いつも浅間さんを見ていて、そこらへんの維持管理がかなりできていらっしゃるなと感じます。 風邪をひいている浅間さんに会ったことがないですし。 でも考えると私も38歳で独立してからは大きな風邪は一度もひいていませんね。 これって何か張りつめた糸のようなものがいつも心にあるからなのか、風邪をひいてはいけないと自分が律しているところが常にあるのでしょうね。 そういえば、浅間さんに教えていただいて健康管理のために1つだけやっていることがございます。 浅間さんは覚えていらっしゃるかわかりませんが、整腸薬を飲んでいると聞いて、その日の帰りに早速ドラッグストアに寄って買ってからというもの、それから毎日欠かさず飲んでいます。 なぜ整腸薬が体にいいのかは実はよくわかっていないんですけど。(笑) ちゃんとした方がちゃんとひとつのことを続けていると聞いて、私もひとつくらい真似しようかなと思い・・・

浅間:いえいえ、ありがとうございます。

生駒:今は経営者として、またはプレイングマネージャーとして、独立してよかったなと思う瞬間はなんでしょうか。

浅間:独立してよかったことはいっぱいあります。 一番は自分の時間が増えたことですね。 もともと定休日は設けず完全予約制でやっていますので、予約が入らなかったときは自分のメンテナンス、体と心の時間に充てています。

生駒:なるほど、そこで体と心をうまくコントロールされていると。 しかし、浅間さんを見てるいとあまり休まれていらっしゃらないような気がするんですが。(笑) ある種、売上が上がるほど自分の時間はなくなると思うのですが、その辺はどうですか。

浅間:前の職場では1日10人、月に250人の世界を体験しました。 それが今では月に100~110人のお客様です。 なので、独立前に比べれば楽というか、コントロールできていますね。

生駒:確かに、私もそれには共感する部分があって、自分の時間などは全く取れない世界でずっとやってきた経験があって、「すごく忙しいですね」と今でもよく言われますけど、当時の忙しさを知っているだけに「そんな大したことないですよ」と感じてしまうのは同じですね。 では、いちスタッフ、店長から今では社長、経営者になられましたが、浅間さんなりの仕事の流儀とはなんでしょうか。

浅間:僕のなかで美容というのは「生涯美容」、お客様が亡くなるまでお客様の髪の毛をきれいにしてあげたいというのが僕のテーマなんです。 そのテーマはぶれずにやっていて、それが僕の中で一番の仕事の流儀です。 この業界では、「私は指名が月に300人です」と、売れていることを表す指標として指名数を表に出すことがよくありますが、僕は「家族指名数」を重要視しています。 指名数では胸を張れるほどではないですが、サロン・立場の35%のお客様は家族でいらっしゃってくれています。 今は家族指名を毎月50組を目処にスケジューリングしています。 家族指名なので、おばあちゃん、お譲さん、お孫さんと家族で予約を取ってくれます。 家族でいらっしゃって「おばあちゃんのことお願いします」とか「私が亡くなるまできれいにしてほしい」とか言ってもらえることが何よりのやりがいです。

生駒:それがさらに浅間さんのモチベーションとエネルギー値を上げるのでしょうね。 今まで伺ったお話からも「生涯美容」を提供するために、これをする、またはしないということで全て判断・決断されていらっしゃるのがよくわかります。 以前、浅間さんに「生駒さんが入院してもカットしに行きますから」と言われたことがあるんですが、なるほどそれが「生涯美容」なのかと思いました。 きっとそれを柱として考えていらっしゃるから、口先だけではなく、心から思っているから こそ今これだけの結果が出していらっしゃるのですね! この間も、私の娘が保育園で「浅間さんに切ってもらったの!」とみんなに言って周っているのを見て、浅間さんの魅力と価値が年代問わず伝わっているんだなと感じたのを覚えています。 それでは最後に、美容師さん、それ以外にも独立・起業して夢を叶えたいという方に向けてメッセージをお願いいたします。

浅間:まず、美容師として独立したいのであれば技術と接客の柱を確立してください。 目配り・気配り・心配りを今以上に磨いてお客様と対応できるような人にならないといけません。 あとは、今あなたが働いている美容室のお金の流れを完璧に把握すること。 そして資金力、お金を貯めてしっかりと準備をしてから開業するのがいいかなと思います。

生駒:資金力については、お金を借りてきて開業するという手もあるじゃないですか。 むしろ今はそういう方の方が多いのではないかと思うのですが、浅間さんが言いたいのはそうではなくて、手持ち資金がしっかり貯まるまでその夢のための努力を続けられるのかと、それくらいの気概と覚悟をもって独立することが重要だということですね。 貴重なアドバイスをいただきありがとうございます。 これだけのお付き合いがある私でも知らないお話をたくさん聞かせていただいて、より浅間さんの魅力を感じることができました。 これからもずっと私のヘアスタイルのメンテナンスをお願いしたいと改めて感じた次第です。

浅間:喜んで!これからはぜひ月8回来てもらいたいですね。(笑)

生駒:それをやってしまうと娘との時間が全然なくなってしまいますよ!(笑) そういえば今日も大規模研修でその話をさせてもらったんですよ~。 月6回カットしてもらっているというと「なんだ?!この人」と大体がどよめきます。 これも浅間さんの「掃除とあいさつ」と一緒なんです・・・人ができないことをする。 これを見つけてやり続けることが、仕事、強いては人生の成功への第一歩だということを改めて実感致しました。 今日はありがとうございました!

浅間:こちらこそありがとうございました!これからもよろしくお願いいたします。

編集後記

実をいうと、浅間さんと僕との間には、単なる「切る人」と「切られる人」という間柄にとどまらない何かがあると感じています。それは、勝手に僕が思っているだけなのかも知れません・・・阿吽の呼吸ってありますが、僕と浅間さんとの間には正にそんな空気感を感じることがよくあります。私が話したくないモードの時、浅間さんは一切話しかけずに寡黙にトリマーを握り僕の頭を綺麗にしてくれます。逆に調子よく話したいモードの時は、引き出してもっと盛り上げてくれます。そこの空気感をその日・その時の僕を読んでくれるのです。何もいわずに・・・。

浅間さんとは、かれこれ18年くらいのお付き合いになりますが、今回のインタビュー企画で知らない一面を知ることになりました。浅間さんが目指す「生涯美容」というお話、初めてお聞きしましたし、物凄く響きました。「生駒さんが入院されたら病院に切りに行かせていただきますよ!」浅間さんが良く言ってくれます。これって本気で言ってくれてるんだ~と今回のインタビューで確信致しました。嬉しかったです!
これからも奢らず、礼儀正しくあろうと考えました。
ひょっとしたら、この言葉が僕を一番安心させながらも励ましてくれているのかもしれません。

「そのくらいのことで、へこたれるな!」と。

浅間さん、何時もモヒカン調整ありがとうございます。
「月に8回来い!」と言われても、ちょっとそれは無理ですが、これからもずーっと宜しくお願い致します。

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